2018/11/21 » 番外編:騎士の条件 第2話「荒くれ騎士たちの奮闘」更新
幼少時に出会った最高位の魔法剣士・聖騎士の中でも伝説的な英雄として名高いレオンハルトに憧れて、セテは日夜剣に勉学に励んでいた。ところがある日、彼の目の前に救世主にそっくりの、長い銀髪と緑の瞳を持つ美しい少女が現れた。少女の名はサーシェス。ロクラン王国で優秀な術者を生み出すことで知られるラインハット寺院に身を寄せているとのことだったが……。10年前に伝説の片鱗に触れた時点で、自分の運命の輪が大きく回っていたことなど、セテはまだ知るよしもない。
アジェンタス騎士団領の四方を守る天然の防火壁、アジェンタス山脈。その雄大な山々の東の空が、朝でもないのに黄金に輝いた。大陸史では汎大陸戦争勃発前にも黄金の空が輝いたと伝えられるため、人々は再び大戦乱の世が訪れるのではないかと不安に打ち震えた。
かの聖騎士の始祖レオンハルトが建国に携わった最初の国家であり、エルメネス大陸でもっとも豊かで美しいとされるロクラン王国。中央諸世界連合の中でも屈指の術者を生み出すことで知られるラインハット寺院に、大やけどを負った少女が運び込まれた。
ロクラン城の牢獄に幽閉されることになったサーシェス。暗闇の中で葬送の鐘の音に心を痛め、自らに課せられた運命の重さにひとり苦しむ。一方、ピアージュとともにアジェンタスを発ったセテは、彼女のよりどころというアジェンタス辺境の孤児院へと向かう。
アートハルク帝国ガートルードの聖戦宣言により、故ダフニス前皇帝の残した謎とともに中央に対する戦争が幕を開けようとしていた。新たな仲間を得たセテはレイザークたちと光都オレリア・ルアーノへ、時を同じくしてフライスとサーシェスも光都へ向かう。
十六歳に成長したセテの心にあるのは、五年前に空中楼閣で出会った伝説の聖騎士レオンハルトに追いつくこと。いつかきっと聖騎士になってみせる。その希望だけが彼の自信の源であった。しかしいつもピリピリした彼のその態度に、親友のレトはなんとなく気分が悪い。
「伝説の聖騎士」と謳われ、その剣技を含めた戦闘能力の高さですべての人間を畏怖させたパラディン・レオンハルトに、金髪にアイスブルーの瞳の青年はぶしつけに指を突きつけて宣戦布告をした。「明日の御前試合、あんたとあたるの楽しみにしてるからな!」
中央エルメネス大陸の中でも北に位置するアートハルクは、代々皇帝の治める君主国家であったが、閉鎖的で内部情報が中央にもたらされることはない。皇帝サーディックは残忍で容赦ない絶対君主であるというが、サーディックは中央の使者を受け入れることをしない。
各国の騎士団の任務のひとつに、結界を突き破って実体化し、害を成すモンスター討伐がある。汎大陸戦争の時代には、彼らは攻撃用生体兵器として重宝されたが、その無差別的な攻撃本能と絶大な攻撃力のために、戦争終結後には結界に封印されたはずだった。
アジェンタス騎士団の剣士たちのあまりの酒癖の悪さに、毎日のように広報部には近隣飲食店からの苦情が届く。地域住民の不信感を払拭するため、急遽、地域交流会が開催されることになり、セテとレトは、屋台で手料理を振る舞わされる羽目になった。