あとがき

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「神々の黄昏」をお読みいただき、誠にありがとうございます。また、「挿話:遙かなる憧憬」を読了いただきまして、ありがとうございました。
 大長編SFファンタジー「神々の黄昏」はいかがでしたでしょうか。ぜひお読みになったご感想やご意見をお送りください。だらしのない管理人ですが、それだけで更新と執筆の励みになります。


 さて、「挿話:遙かなる憧憬」はいかがでしたか?
 この話は「プロローグ:空中楼閣の聖騎士」から五年後、そして本編「第一章:黒き悪夢の呪縛《のろい》」から五年前の、セテが高校生の頃の話です。しかも物語の謎のひとつでもあった、アートハルク戦争勃発直前の話でもあります。軽い気持ちで「コーコーセーのセテとレトの友情と確執が書きたいだけなんだよ〜〜〜」と書き始めた短編のつもりだったのですが、見事に行き詰まり、構想を練り直した結果またまた大風呂敷を広げてしまったもの。まさかこんなに長く連載するはめになるとは思いませんでした、正直。
 本編ではとても悲しい結末に終わったセテとレトの関係をもっときちんと書いてあげよう、それに、ふたりのことだからしょっちゅう喧嘩をしていたに違いない。男の子の喧嘩ってかわいいもんね〜などと考えて書き始めたのがきっかけです。しかし、その間にジョカという新キャラやらアートハルク戦争の話題を適度に盛り込んで、「番外編」ではなく「挿話」として書き上げました。実際には時系列的に「序章」と「第一章」の間に収まるべき話なのですが、第一章を読んでからでないと楽しめないだろうということで、一章と二章の間の挿話という形にしています(目次ではそうはなってませんけど(^ ^;;)。
 途中、セテとレトの関係がなんとなくボーイズラブ(笑)っぽくなっていてイヤンな状態ではあるんですけど、当初の目的はちゃんと果たせているかな、と。

 この話でのセテは、とても鼻につくいやなガキです。高校生くらいのときってみんなこういう時期があったと思いますが、「自分はなんでもできるはず。自分にかなうやつなんていないはず」と思う反面、自分の無力さに情けなくなったり、なにもかもがうまくいかないことに憤ったりしますよね。さらには挫折を味わって目が覚める、そういうのを経験しないと、人間ってなかなか前に進めなくなりますよね。そういう時期のセテを書いてみたいなと思ったので、セテのいやなやつぶりは徹底して書いたつもりです。
 反面、セテをいなす役割として描いたジョカは、確かにいろんなことを経験してきてセテから見れば「大人」ですが、彼女も完全な人間ではありません。自分の思うようにならなかったことを経験して、いまの自分が正しいのかどうかは、実際には分からない。でも、大人になるとそう思ったら最後、自分に負けてしまうじゃないですか。だから彼女は、胸を張って聖騎士である自分を誇りに思っていると言えるんです。人間って、いろんな面を持っているじゃないですか。いろんな角度で見える人間性の一面を、この挿話で書いてみようと思ったのもひとつの試みといえます。

 さて、本編でもそうでしたが、挿話では輪をかけて聖騎士レオンハルトにラブラブのセテ。ビョーキですかと突っ込まれても反論できないのですが、なぜ彼がここまでレオンハルトに固執しているのか、それは今後本編でも明らかになるネタバレのひとつです。だってあれくらいの年齢であんなにレオンハルトを信奉しているのって、ホモですかって感じでしょう(笑)。でもあれにはちゃんとした理由があるんです。それこそ序章のずっと以前に、それを決定的にした事件があったんだとだけ言っておきましょう。

 ところで、この挿話のタイトルとなっている「遙かなる憧憬」という言葉ですが、憧憬とは文字どおりあこがれの念のこと。誰が誰に憧れているか、おわかりいただけたでしょうか。なかなかうまく書き表すことができませんでしたが、セテがレオンハルトに、レトがセテに、セテがジョカに、ジョカがセテに、ジョカがレオンハルトに、それぞれの思いを抱いていることを表したつもりです。セテがレオンハルトに病気のごとく憧れているのは周知のことですし、第一章の中盤で書いたように、レトがなんとなくセテを異性と同じような目で見始めていることもここで匂わせています。さらには、セテは破天荒なジョカにものすごい短い時間で惹かれるようになっていったし、ジョカもセテに惹かれるものがあったからあれだけちょっかいを出してきたはず、また、ジョカは彼女が言ったとおり、生で見たレオンハルトに並々ならぬ敬愛の念を抱いています。それぞれの思いが交錯して、うまくいかない恋愛ドラマのような関係ができあがっていればいいなぁと思っています。
 最後にジョカの結末ですが。
 私は極力ハッピーエンドだと思って書いたつもりです。あれは確かに彼女にとっては不幸なできごとだったかもしれませんが、彼女は自分なりに、別の人生を歩むことができたわけです。人間、不幸をいつまでも背負っていると本当に不幸になるじゃないですか。発想の転換をしてでも幸せになろうとする、そういう力を持っていたのがジョカなんですね。彼女は「神々の黄昏」の中でもまれにみる上昇志向で、プラス思考の持ち主だと思います。

 ネタバレの関係で、アートハルク戦争に関することは本当にごく一部しか描けませんでしたが、本編第二章では徐々にアートハルク戦争の謎を解き明かしていこうと思っています。そのときには、レオンハルトとセテの関わりも明らかになることでしょう。
 それでは引き続き、急展開し続ける本編をお楽しみください。

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