挿話:遙かなる憧憬

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幻の空中楼閣での冒険から五年。十六歳に成長したセテの心にあるのは、五年前に出会った伝説の聖騎士レオンハルトに追いつくこと。いつかきっと、あなたの横に並んで戦える聖騎士になってみせる。その希望だけが、彼の自信の源でもあった。しかし、いつもどこかピリピリした彼のその態度に、親友のレトはなんとなく気分が悪い思いをしていた。
セテは、アジェンタス騎士団領ヴァランタインで開かれる武術大会に出場することになった。もちろん賞金二千セルテス目当てのレトや母親にけしかけられたわけだが……。慣れない木刀のおかげで血豆が破け、痛む利き手を抑えながら最後の勝負に挑むセテ。そこで対峙した緋色のマントを羽織った大柄な女剣士を倒せば、セテには優勝が待っているはずだった。

Act.1

アジェンタス騎士団領の秋はもっとも美しいとされる季節で旅行者も多い。この時期、旅行者を見込んでさまざまな祭りや催し物が行われる。祭りの行事のひとつに、賞金つきの剣の試合が行われるのだが、セテは賞金2千セルテスを賭けて出場することになった。

Act.2

試合まで時間もないというのに、出場する剣士の登録は全然はかどっていないようだった。セテとレトは出場する友人たちと賞金を何に使うか捕らぬ狸の皮算用を始めるのだが、そこへ長身の女剣士が駆け込んできた。どうやら彼女も出場するようだが……。

Act.3

セテは順調に勝ち進み、準決勝にまで残ることとなった。友人たちやセテのファンであるおばさん連中は彼を応援しているのだが、レトはセテの態度が気に入らなかった。自信たっぷりで負けた人間を見下す彼の態度の裏になにがあるのか、なにに憤っているのか。

Act.4

大柄な女剣士は聖騎士だった。破天荒な彼女はおもしろ半分に剣の腕試しに出ることにしたのだが、彼女の補佐官でもある青年は民間人に術法を使うなんてとたしなめる。彼女は気を失っているセテを見舞うためにテントに戻り、レトに自分が出場したわけを話す。

Act.5

女に情けをかけられて負けた。これほどの屈辱はないといわんばかりに憤り、レトに当たるセテ。自分が負けたことが許せないのではなく、いまの未熟さが許せないのだという。レトの慰めもセテは完全に拒絶。ところがそのとき、ふたりは何者かに殴りつけられ……。

Act.6

ハイ・ファミリーの青年らに殴られ、あわやアキレス腱を切られるその直前、あの大柄な女剣士が姿を現した。ハイ・ファミリーの連中をやりこめたあと、彼女は気を失っているセテを癒して自分の身分を明かす。それでもセテは彼女に食ってかかるのだったが……。

Act.7

祭りが終わり、街はいつもの落ち着きを取り戻した。いつもどおりに早めに登校してきたレトは、親友が今日、本当にちゃんと学校に来るのか気が気でなかった。セテがなにに焦り、なにに憤っているのかを知ったとはいえ、まだ痛々しい親友の姿に顔がこわばる。

Act.8

突然押し掛けてきた女聖騎士に、セテはいらつきながら形ばかりの宿題に集中しようと試みる。だが、横からちょっかいを出してくる彼女にペースを崩されてしまう。彼女が話す言葉に耳を傾けるうちに、過ごす時間がそれほど心地の悪いものではないと思い始める。

Act.9

アートハルク戦争が勃発した。アートハルクの術者軍団に包囲されたアジェンタス騎士団領では不安な毎日が続く。アートハルクの守護剣士レオンハルトのことで口論となり、セテとレトは殴り合いに。レトはセテがレオンハルトのことばかり話すのが気に入らない。

Act.10

レトをかばって頭部にキズを負ったセテだが、レトの応急処置のおかげで窮地に一生を得、ふたりは永遠の友情を誓う。アートハルク戦争が終結して半年、セテの家を訪れた意外な人物が。すれ違いの憧憬がやがてひとつになったとき、セテは少しだけ大人に近づく。

あとがき

オリジナルSFファンタジー小説『神々の黄昏』の「挿話:遙かなる憧憬」あとがきです。

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