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「サイトが重い!?」さぁどうする!? |
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インターネット黎明期、まだパソコン通信が主流だったころ、日本のインターネット回線状況はそれはひどいものでした。私は経験したことがないのですが、前の会社の友人たちと飲むとよくそのころの話題がのぼり、1,200bpsのモデムと電話回線を使っているのが当たり前だったとか。私は幸いといっていいのか、9,600bpsから14,400bpsに世間が乗り換えを始めたころにモデムを使い始め、28,800bps、56Kbps、ISDNを早いスパンで経由して、いまではADSL 8Mbps、もうすぐ12Mbpsかファイバーに乗り換えようという環境です。
14,400bpsのモデムってどんなもんか、お若い方には想像もつかないと思います。とにかく、少しでもテキスト量の多いページや画像が貼ってあるページを見ようとすると、カーソルの時計やバルーンがずーっとまわりっぱなし、ブラウザのステータスバーはいつまでたっても進まない。イライラしてたばこに火を点けるも、一本吸い終わってしまう、なんてこともザラでした。これがいわゆる「重い」といわれる現象です。
さて、今回はこの「重い」といわれる現象についてお話ししましょう。
最近は「いきなりブロードバンダー」といいますか、ADSLからインターネットを始める人が多いため、回線速度に関するイライラはほとんど聞かれませんが、昔は「重くてイライラする」ということがよくあったもんです。また、最近始めたという人でも、56KモデムやPHSカードの無線接続をしている人はまだまだ多いんです。仕事でよく外からノートパソコンとPHSカードを使って接続していた時期があったのですが、やはり(モデムの速度の違いもありますが)有線に比べると接続環境は不安定で、ビジーになることや切断されることも多いです。
仕事柄、広帯域回線をずっと使っていて、自宅でもミドルバンド(※筆者注:ADSLはブロードバンドではない! あれはミドルバンドで、本当のブロードバンドはFTTHだゾ!)を使っているのですが、極力遅い回線の人でも見られるようなサイト作りを心がけていますが、自分のサイトはブラウザのキャッシュに入っていますから、実際にどうなのかは分かりません。
重さについて語る前に基礎知識。データ転送速度を表すbpsについてご説明しましょうか。
bpsとはビットパーセカンド(ビットパーセクなんていう人もいるでしょう)の頭文字をとった略語で、1秒間に何ビットのデータを送信できるかを表した単位です。ビットとは0と1の2進数の1桁を表します。ネットワークの世界では、ビットでネットワークを表したりとややこしいモンですが(.com Masterのダブルスター、見事に落ちた私が言うのもなんですが)、バイトとはビットが8つ集まった単位、すなわち8ビット=1バイトと覚えておきましょう。ついでに1キロバイト(KB)=1024バイトです(めんどくさいので1KB=1,000バイトといってしまっても問題ないと思いますが(^ ^;; コンピュータの世界ではなんでも8の倍数が都合がいいんです)。
そうすると、例えば28,800bpsは理論値で1秒間に3,600バイト(約3.5KB)のデータを受信可能です。56Kbpsは7,000バイト(約6.8KB)、64Kbpsは8,000バイト(約7.8KB)、1.5Mbpsは187,500バイト(約183KB)、8Mbpsは1,000,000バイト(約976KB)、12Mbpsは1,500,000バイト(約1.4MB)、100Mbpsの光ファイバーに至っては1秒間に約12.2MBのデータを受信できることになります。頭がこんがらがってくると思いますが、この数字を覚えておくと、接続しているネットワークで、いま自分がどれくらいのデータ転送を行えているかの目安になると思います。ただし、これは下り(ダウンロード)速度の、しかもあくまで理論値だということをお忘れなく。(^ ^;;
さて本題。
サイトやページが重たい理由にはいくつかあります。
まずひとつは、実際にページを構成する要素がたくさんあって読み込みに時間がかかる、ということ。
前述したように、サイズの大きな画像がたくさん貼ってある、などというのがいちばんわかりやすいと思います。例えば50KBの画像を貼ったHTMLを、56Kモデムの人が表示しようとしたとします。画像だけでなく、HTMLの記述自体もブラウザがダウンロードするので、実際にはおそらくは52KBくらいだと計算しましょう。すると、この人はこのページに貼った画像を含むすべてのHTMLを表示し終わるのに、約7.5秒ほど待たされることになります。ADSL 8Mbpsの人がほぼ一瞬で表示し終えるのに比べれば、その差は歴然です。
またADSL 8Mbpsの人であっても、1MBを越えるような画像(実際にはありえませんが)が7枚もページに貼り込んであれば、やはり表示し終わるのに約7秒待たなくてはなりません。
テキストだけのページであっても、ブラウザが読み込むデータ量が多ければ(文字量が多ければ)それだけ表示に時間がかかり、見る人によっては「重い」ページになりうるのです。
データ量は適度にするのが好ましいといえるでしょうね。
もうひとつはブラウザによる「重さ」です。全般的に往年のブラウザNetscape Navigatorシリーズは重いブラウザと言われて久しいのですが、なぜMicrosoft Internet Explorerが軽いと思われているのか、それは両ブラウザの仕様の違いにあります。
Microsoft Internet Explorerは仕様的に、HTMLの閉じタグを読みません。開始タグだけを見て表示するので、読み込んだそばからページを表示していきます。ところが、Netscape Navigatorは開始タグと閉じタグをセットで見て表示しますから、最初に読み込んだデータがあってもソースの中に閉じタグが見つかるまでは表示しない仕様になっています。IEで作ったページがNNで表示されない、なんてのは、タグを閉じてない汚い(失敬)間違った記述であっても表示してしまうIEの気前よさ(一応皮肉です)によるものなんですね。
またNetscape Navigatorシリーズは、TABLE要素の各々のセルに記述された内容が多ければ多いほど表示が遅くなる仕様があります(大きさによってはMicrosoft Internet Explorerでもかなり重くなり得ます)。TABLE要素を入れ子にして幾重ものTABLEを使っていたり、TABLEあるいはセルの縦横のサイズが指定されていないと、読み込んでいる途中から計算をし直し、再レンダリング(再表示)なんてことも。
もともとレイアウト用の要素ではありませんが、TABLE要素はページレイアウトにとても便利です。ですが、使い方にも気を付けなければなりませんね。
さらに、使っているパソコンのCPUパワーやメモリ搭載量によっても、重さは影響します。これはページの表示に直接関係するものではありませんが、ブラウザの動作に影響します。
例えば、私の自宅にいまだ現役のPentium MMX 180MHzなんてマシンがありますが、これとメインで使っているPentium III 500MHzのノートパソコンの動作を比べれば、その差は一目瞭然。同じページを同じブラウザで開いても、CPUとメモリの搭載量で体感する重さはまったく違うでしょう。特にMacintoshの場合はメモリ割当量が大きく作用しますしね。私が初めて小遣いで買ったMacintosh Performa5220と、いまメインで使っているPowerMac G4/400(G3をG4に改造)も全然違います。このG4も会社の純正G4 800MHzに比べれば、ブラウザの起動や動作はカメのように遅いもんです。
この場合は、あきらめて新しいマシンを買うか(そこまで言うか)、メモリを買い足すか、Windowsならリソースを食ってそうな常駐アプリをはずし、Macintoshなら余計な機能拡張、コントロールパネルをはずしましょう。意外に知られていないことですが、WindowsでもMacintoshでも、デスクトップにたくさんのアイコンをおいているのはマシンの動作速度を格段に遅くしてしまいますよ。
あとは、安定した、早いOSに乗り換えるのも手です。Windowsでいちばん安定しているOSは、私はWindows 2000だと思います。Windows Meは98のあとに出たくせにいまだに16ビットOSだし、不安定(あれは退化としかいいようがない。マイクロソフトではMeはなかったことになってるし)。どうせなら98にダウングレードしたほうが(笑)安定しますし、XPは余計なモンがいろいろあってうざくて重い。やっぱり2000は安定していて早いと思います。Macintoshなら漢字TALK 7.5.1といいたいところですが、インターネット関連の機能がクソみたいなので、やっぱりOS 8か9.2.1かな。OS Xはまともに動かしたことがないので分かりません(笑)。
最後の要因ですが、これはなかなか厄介です。使っているプロバイダーの回線や経由する回線状況に左右されることです。
例えばよく「夜になると重くてつながらない」なんて掲示板がありますよね。これです。
無料の掲示板は人が殺到しますし、なにより掲示板を運営している企業あるいは団体は、ほとんどの場合広告収入だけで掲示板をまかなっています。とすれば考えられるのは、掲示板のおいてあるホストからインターネットにつながっている回線が細いこと。多くの人が訪れ、トラフィックが増えれば、プロバイダーなど会員から有料で契約料を取っているところはすぐに回線増強工事を行いますが、無料で運営している場合はなかなかそうもいきません(回線増強は自転車操業なんですよ。それくらい金がかかるんです。だからいろんなプロバイダーがつぶれてしまったんですね)。あなたが見ようとした「重い」ページは、そうした環境にあるサーバーのひとつなのかもしれません。
また、あなたが接続しているプロバイダーにも同様のことが言えます。私の使っているドリームトレインインターネットは、某雑誌が行う顧客満足度調査では毎年1位を飾り、悪口を聞いたこともないのですが、世の中そうしたプロバイダーばかりではありません。夜になるとトラフィックが増えてつながりにくくなることもあるでしょうし、そうでなくても途中経由するどこかの回線が混雑していれば、それだけで見たいページが重くなることもあります。
プロバイダーには1次プロバイダー、2次プロバイダー、3次プロバイダー……のようなネットワーク図内の立ち位置があって、どこにつながっているか、どこを経由しているかで回線速度が格段に変わります。
1次プロバイダーとは、バックボーンに直結して直接インターネット網に接続しているプロバイダーを差します。バックボーンに直結していますから、もしとても好意的なプロバイダーであれば回線速度はピカイチでしょう。2次プロバイダー以下は、1次プロバイダーの回線を経由してインターネット網に接続しているプロバイダーを差します。サービス内容に差異はありませんが、回線状況には大きな差がでてきます。
2次以下のプロバイダーは自分ではインターネットに接続できませんから、もし1次プロバイダーの回線が混雑していれば、2次以下のプロバイダーから接続しようとするユーザーは、下に行けばいくほど回線が遅くなっていきます。どこか経由しているところひとつに故障があったり混雑があった場合は、2次プロバイダー以下のユーザーは致命的な影響を受けるわけです。
この場合は、早いプロバイダーに乗り換えることをおすすめします。メールアドレスが変わるという問題もでてきますが、もしプロバイダーの回線のせいでいやな思いをしているのなら、そんなプロバイダーは早く見切ってしまったほうがいいと思いますよ。遅かれ早かれ、そういうプロバイダーはつぶれます(笑)。
さて、これまでいろいろな「重さ」の原因を見てきましたが、サイト作りに直接関係があるのは1番目の「ページの重さ」の軽減でしょうね。あとは環境なのですぐに改善するというわけにもいかないでしょう。
ですが、本当に「軽い」ページがいいページなのか、私はそれを疑問視しています。確かに軽いページはありがたいですし、軽いという理由だけでGoogleを使っている(ほかの国内検索ポータルはどうにも重くていやですね)人も多いですが、極限まで画像を省いて作ったページというのがいいデザイン、サイト構築だとは私は思いません。ネットワーク依存症で、ネットワークでメシを食っている私が言うのも何ですが、むしろそれは時代に逆行しているのではないでしょうか。
インターネットはものすごいいきおいで生活に浸透しています。先にもちらりと述べましたが、最近インターネットを始めた人はいきなりADSLからインターネットに接続し、楽しんでいます。重かった時代を知らないから何の前知識もなく、ストリーミングやボイスチャットを楽しんでいたりするんです。
このサイトを訪れる人の大半は、サイトを作っている、あるいはこれからサイトを作ろうと思っている人だと思います。みなさんはインターネットを本当の意味で楽しんでいますか? 重いからと言ってなにかをがまんしていませんか?
少し前、いまのADSLなんかよりもずっと細い128kbpsの専用線は、月額3万余円の利用料金を支払わなければなりませんでした。しかし、いまでは光ファイバーもプロバイダー料金込みで月額1万円でおつりがくる時代です。ほんと、たいした金額じゃないですよね。
私は、例え小説というテキストがメインのサイトであっても、インターネットでサイトを公開しようというからには発表するだけでなく、インターネット上にあるさまざまなコンテンツを心底楽しんでほしいと思っています。ですから、もし機会があるのでしたら広帯域に移行して、がまんすることなくインターネットを楽しんでほしいなと思います。
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