あとがき

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「神々の黄昏」をお読みいただき、誠にありがとうございます。また、「番外編:魂の航海〜Amazing Grace〜」を読了いただきまして、ありがとうございました。
 大長編SFファンタジー「神々の黄昏」はいかがでしたでしょうか。ぜひお読みになったご感想やご意見をお送りください。だらしのない管理人ですが、それだけで更新と執筆の励みになります。


 さて、「番外編:魂の航海〜Amazing Grace〜」はいかがでしたか? この番外編は、穂高あきらさん主催の「番外編競作企画」第二弾「禁じられた言葉」に参加した作品です。昨年の参加と同様に時間との戦いとでも申しましょうか、なんと締め切り当日の23時55分ごろに完結、登録申請をするというていたらくでございました(主催者の穂高さんにはご迷惑をおかけしてました)。
 さて、今回は「禁じられた言葉」というのがテーマとなっていたのですが、その解釈の幅広さに愕然としたものです。言ってはいけない言葉、禁じられた呪文、禁句、なんらかの理由で封じられた言葉、歴史舞台から姿を消した失われた言語……さまざまなネタが思い浮かんだのですが、なかなかイメージとして固め、話を作り上げていくことができませんでした。絶対に(ストーリーの中心が)他の人とかぶってはいけない、そんなことばかり考えて、本来の「作品を作ることの楽しさ、おもしろさ」というのを忘れていたのかもしれません。

 番外編というと、本編のサイドストーリー、あるいは後日談などをつづったものです。主人公たちの魂の安息を描いたほのぼのテイストだったりするとなおいっそう作品全体を楽しめるわけですが、私の場合はどうも本編主人公を番外編主人公にはせず、絶対に本編で活躍しない人間を中心に据えるのが好きなようです。また、ストーリーも現在進行形の話ではなく、本編の過去であったりして、本編での失われた時間を番外編で埋めていき、徐々に本編のネタバレをしていくのが好きなようです。ネタバレといってもそんなに大きなネタバレではありませんが、今回のこの「魂の航海〜Amazing Grace〜」には重要なキーワードがいくつか隠されていたりあけっぴろげになっていたりするので、お読みいただく際にはちょっとご注意いただくのがいいかもしれません。

 冒頭でレオンハルトが歌を歌っているわけですが、この「歌を歌う」というシチュエーションは、実は番外編競作の今回のテーマである「禁じられた言葉」よりも、決選投票まで残った「うた」というテーマを想定して用意していたものでした。「うた」に関するいくつか失われた時代のエピソードを展開して、よりSFらしさ(笑)を前面に押し出したものを書くつもりでやる気マンマン状態だったわけですが……歌というのは言葉に音階をつけたものですし、このシチュエーションをそのまま使っても「イケるぜ!」と踏んだのでこのまま残すことにしました。当初の設定ではレオンハルトが歌を歌うわけではなかったのですが、書き上がったものを読み返しながら、歌のうまい伝説の聖騎士を想像すると少し吹き出してしまう私です。
 さて、レオンハルトが歌っているこの歌の曲名、ピンときた方もいらっしゃることでしょう。ずばりこの番外編のタイトルにもなっていますので、興味のある方はぜひCDなどで聞いてみてくださいね。ああ、あの歌か!というほどポピュラーですし、私も大好きな曲のひとつ。いろいろなシンガーがこれをカバーしており、日本語訳の歌詞もたいへんすばらしいですよ。

 この番外編を書くにあたり、どの時代にするか、どの人物を中心に据えるかでたいへん悩んでいたのですが、本編ではまだ語られていない、アートハルク帝国のダフニスの戴冠式直前のあたりで、ちょいとシビアな雰囲気で書いてみようと思い立ちました。
 実はこの話、当初はガートルードの一人称で書く予定だったんです。その証拠に、ガートルードが冒頭に登場してから、彼女が見たことしか書いてないんですね。彼女の見たものをそのまま書いているので、ガートルードはほとんど影の薄い役割になってしまっています。もうちょっと考えて書けばよかったのですが、時間とのかねあいもあり、惜しいことをしました。いつか本編が完結したあかつきには、この番外編にもきちんと手を入れて書き直したいと思っています。
 ってか、書き直したいものばかりですね。時間のせいにするのはアレなんですが、レオンハルトはもちろん、金髪のガートルード、それからダフニス、この三人の人間性はまったくといっていいほど表現しきれていないですし、単純にストーリーものの短編として「おもしろいかぁ?」な出来になっているのが本当に悔やまれるところです。この三人の間には、本編でもまだ語られていない「強い心の結びつき」があるのですが、テーマにひきずられてその部分をすっかり薄味にしてしまったのが失敗だったのかもしれません。
 さて、どうしてレオンハルトがいきなりダフニスに仕えることを決意し、アートハルクの守護剣士になったのか、そもそもなんでレオンハルトがアートハルクに赴くことになったのか、二百年に満たないアートハルク帝国の歴史の中でなにが行われてきたのか、ちらりと見えるレオンハルトの過去などなど、いろいろ中途半端に見せてはいるのですが、これをしっかりと解説するにはまだまだ本編で片づけなければいけないことを消化してからのずっと先になりそうです。そもそもアートハルク戦争の根底にある、この三人の不思議な絆についてしっかりと書かなくてはならないので、謎ときについてはもうしばらくお待ちください。今度はネタバレを気にせず、じっくりたっぷりねぶるように書いてみたいものです。

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