番外編:魂の航海〜Amazing Grace〜

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中央エルメネス大陸の中でも北に位置するアートハルクは、代々皇帝の治める君主国家であったが、たいへん閉鎖的で内部の情報が中央にもたらされることはなかった。中央の調査によれば、皇帝サーディックは残忍で容赦ない絶対君主であることが確認されてはいたが、サーディック自身は中央からの使者を受け入れることすらしない。
そんな折り、中央評議会と聖救世使教会の命を受けたパラディン・レオンハルトは、妹のガートルードを伴ってアートハルクを表敬訪問した。客人としてもてなしを受けた彼らの滞在中、皇帝サーディックは暴徒に襲われ、あっけなく命を落とした。その長子ダフニス・デラ・アートハルクがすぐにでも皇位を継承するはずであったが、彼には皇帝になる気はないという。その言葉の影に隠されたアートハルクの悲惨な歴史に、レオンハルトは思いを馳せる。

Act.1

雪の残るアートハルクの大地を見ながら展望台を登るガートルード。朝早く起きて客室を出て行った兄の姿を探すため、護衛の兵士に案内をしてもらい階段を上るのだが、展望台のほうから聞こえる歌声に足を止める。彼女の兄が以前からよく口ずさむ歌であった。

Act.2

ダフニス自身から語られた言葉は、アートハルクの二百年に満たない歴史で代々なにが行われていたかを確実に裏付けるものであった。ダフニスを皇位につけたくない者はたいそう多く、腐敗した城の中ではいまだ前皇帝サーディックの呪縛に囚われたままだ。

Act.3

朝からアートハルクの大地を歓声が覆う。国民が待ちに待った、アートハルク新皇帝ダフニス・デラ・アートハルクの即位式が行われる日のことであった。もうダフニスは人を憎み続け、自分を卑下する卑屈な少年ではなく、アートハルクの立派な新皇帝であった。

あとがき

オリジナルSFファンタジー小説『神々の黄昏』の「番外編:魂の航海〜Amazing Grace〜」あとがきです。

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