第三章:死せる夢見の大地

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アートハルク帝国ガートルードの聖戦宣言により、にわかに中央圏内で動揺が広がる。故ダフニス前皇帝の残した数多くの謎とともに、アートハルクの中央に対する戦争が幕を開けようとしていた。そして新たな仲間を得たセテはレイザークたちとともに光都オレリア・ルアーノへ、時を同じくしてフライスとサーシェスも光都へ向かう。
別々の場所で別々の運命に翻弄されていたセテとサーシェス。ふたりが合流するとき、物語はいよいよ核心に迫る。アートハルク戦争とはなんだったのか。『神の黙示録』とは何をもたらしたのか。レオンハルトは、サーシェスは、フライスは、ガートルードは、そのとき何を思い、何を考えたのか。死せる夢見の大地は、最後に輝くのか。

第一話:想いと思惑と

中央から離反したレイアムラントでガートルードとレイアムラント首相による同盟結成の調印式が催された。多くの報道陣が招かれていたが、彼らはガートルード本人から軍事行動の目的を聞きたがっている。五年前のアートハルク戦争勃発の経緯が語られるが──

第二話:旅の途中で

サーシェス本人の願いもあり、光都までの旅立ちを決意したが、サーシェスは馬車でのほとんどを眠って過ごすことが多くなっていた。疲労によるとしても眠りに落ちる時間が長すぎる。不安なフライスをよそに、馬車はアートハルク国境付近を通りがかっていた。

第三話:遭遇

内緒で乗り込んだベゼルにレイザークとセテは相当な怒りをぶつけるが、ジョーイのはからいでうまくまとまってしまう。わずかな休息の合間に、ジョーイはセテと、ベゼルはアスターシャと奇妙な友好関係を築き、次第に一行に不思議な連帯感が生まれていく。

第四話:集結

結界の裂け目から姿を現したのは、フレイムタイラントと同属性を持つ暗黒の炎の化け物であった。ベゼルとアスターシャを守るために、セテとレイザークは剣を抜くが、王女とベゼルを守りながら戦うのは得策ではない。ひとまず馬車で逃げることを優先するが……

第五話:女神の探し物

思わぬところで再会を果たしたセテとサーシェス。彼らはそれぞれの旅路を語り始める。レイザークとフライスにはある思惑があり、それをはっきりさせておきたかった。レイザークはセテの腕をひねり上げて、彼の右手のひらの銀色の傷跡をまじまじと見つめる。

第六話:預言の続き

〈青き若獅子〉と救世主の復活。セテは自分の人生と大陸史のつながりに恐怖を感じつつも、これまでの出来事を総括するようにレオンハルトと救世主との関わりを吐露する。セテとサーシェスを中心に世界が動くのか、それとも彼らが世界に振り回されているのか。

第七話:困惑と安堵と焦燥と

衝撃的な発言に混乱したセテは、宿の外で頭を冷やそうとするが、そこへ同じく憔悴したサーシェスが。彼女の瞳に、かつてセテが感じたひたむきさや前向きさは感じられなかった。人は変わるもの。セテは自分とサーシェスの距離感を取り戻すべく、口を開いた。

第八話:蜂起

賑やかなロクラン王国の市場で、財務長官ミハイル・チェレンコフは、これが占領下の国の現状なのかどうか夢見心地であった。そんな折、彼に暗号文が寄せられる。今夜何事もなかったかのように装い、執務室に来るようにとの伝言だったが、果たしてそれは罠か。

第九話:混乱

ロクラン国内での工作が功を奏し、アートハルクの指揮系統はずたずたになった。その知らせを受けたラファエラは、正面からロクランに突入する決意をする。ロクラン解放のためにラファエラは久々に前線に立ち、鉄の淑女らしい力強い声で隊列に号令をかける。

第十話:過去と未来を知る賢者

光都入りを果たしたセテは、久しぶりの復帰に緊張しながら現長官マクスウェルとの会談に臨むが、途中、栗色の髪をした未来を知る預言者ヴィヴァーチェが入ってきた。サーシェスとフライスは彼女に運命をゆだねるようだったが、言いしれぬ不安がセテを襲う。

第十一話:本当の真実

未来を知る預言者、賢者ヴィヴァーチェに囚われの身となったセテ、サーシェス、フライスの三人。セテは十七年前、アジェンタスで起きたレトと同じ事件の発端となったその日に転移させられていた。過去と未来を同義だと語る巫女はなにを伝えるつもりなのか。

第十二話:巫女の最期

セテをかばうように立ちはだかるサーシェスの姿をした幼女。ヴィヴァーチェに対し容赦なく術法をあびせる姿や口調は、セテの知るロクランにいた心優しい少女とは似ても似つかないものだった。そしてセテは、事件の真相を知るレイザークに怒りをぶつけた。

第十三話:聖騎士の帰還

崩落した床から落ちたセテとレイザークとサーシェスの三人。目の前には、巨大な水晶の固まりに捕らえられたレオンハルトの姿があった。祭司長ハドリアヌスは、レオンハルトのいまの状態がなにによるものか、もったいつけたそぶりでセテに話し始めるのだった。

第十四話:拘束ふたたび

意識の戻らないレオンハルトとサーシェスは病院に担ぎ込まれた。セテはいままで起こったことを頭の中で整理することもできずに混乱している。レイザークも同様だった。そこへ、サーシェスが目を覚ましたという知らせが。ふたりはサーシェスの病室に向かう。

第十五話:記憶の重さ

アスターシャ王女の無事は全世界に広まり、ますますエルメネス大陸の世論は分裂していく。アスターシャは記者会見だけで自分が何もできないのにいらつき、当たり、そしてセテも同様に、自分がなにもできない非力な人間であることにいらだちを募らせていた。

第十六話:逃亡

レイザークは聖救世使教会内の病院に入院しているラファエラを見舞った。ラファエラは入院していても仕事のことばかり考えているようで、レイザークは閉口する。そのとき、病室の明かりがちかちかと明滅する。電気系統の定期点検というがいやな予感がする。

第十七話:刺客

レイザークはセテの言動に不満と不信だらけのようだった。セテがひとりでサーシェスを解放して光都を抜ける、そのようなことを考えつくとは思っていないのだろう。行動を監視するとまで言われたセテであったが、一行はとりあえず港町で休憩を取ることに。

第十八話:辺境の助け手

一行を待っていたのは、辺境の蛮族の女戦士アラナ。彼女はジョーイはもちろんレイザークとも面識があり、辺境で待つテオドラキスという人物の使いであった。テオドラキスとは知る人ぞ知る聖賢五大守護神のひとりで〈気〉の力を操る人物だ。一行は船で辺境へ。

第十九話:楽園の終焉

二百年以上前、汎大陸戦争が始まる前のこの世界の姿を、一行はテオドラキスとサーシェスの共有幻視によって体感する。この世界がその昔、どのような姿をしてどのような文明を築いていたか、そしてそれが汎大陸戦争によってそのようにして破壊されたのか。

第二十話:天の書記官にて

何もかも忘れたいと嘆くサーシェスに、セテは彼女の苦しみを和らげるために知っておくべきことを教えてほしいと懇願する。サーシェスは、セテとレイザーク、テオドラキスだけを連れて〈メタトロン〉と呼ばれる何かが安置される場所へ向かうことを決意した。

第二十一話:甦る黙示録 前編

サーシェスの支援でメタトロンが本来の機能を発揮するのだが、セテにはまだ理解するまでに時間が必要である。不思議な言語で語りかけるメタトロンを前に、サーシェスはとうとう、失われた書物の真の姿について言及する。〈神の黙示録〉が甦る瞬間であった。

第二十二話:甦る黙示録 後編

〈神の黙示録〉は失われた歴史を淡々と語る。世界の始まりと、イーシュ・ラミナと呼ばれた種族の誕生や旧世界《ロイギル》の高度文明、そして、汎大陸戦争の幕開け。サーシェスの力によって仮想空間で実体化された真実の記録が、徐々に明らかにされていく。

第二十三話:青き獅子と赤き竜 前編

〈土の一族〉と接触を図るべく辺境に降りた真紅の竜騎兵アトラス・ド・グレナダは、〈土の核〉の場所を聞き出すことに成功した。一夜明けたその日、落ち込むセテに発破を掛けたアスターシャのヒントから彼らもまた〈土の一族〉との交渉を決意するのだが……。

第二十四話:青き獅子と赤き竜 中編

アトラスは類い希な才能を持つ刀鍛冶師であり、土の核を管理する長に会うために屋敷を訪れた。中央ではあまり見られない建築様式の屋敷に見とれるアトラスに、ガーディアンが襲いかかる。要所を守る人工生命体と対峙したアトラスはレーヴァテインを抜く。

第二十五話:青き獅子と赤き竜 後編

〈土の一族〉族長ヨナスの横暴により、ついに土の封印が解呪される。土の力が実体化して一行を襲うが、絶対魔法防御のために並たいていの攻撃は効かない。いったんアトラスと共同戦線をはる一行であったが、そんなとき突然セテがうめき声をあげて膝をついた。

第二十六話:託されるもの

再度の封印後、ヨナスからセテにあるものを託すというテオドラキス。また術法に関することも伝えたいと言う彼の様子にただならぬものをセテは感じた。いっぽう看病していたアスターシャの前で、籠絡されかけたサーシェスがようやく目を覚ましたようだが……。

第二十七話:知識の泉

アートハルク戦争の前後から術法が弱体化しているのではないか。テオドラキスはセテが術法を使えなかった理由に大胆な推理をぶつけた。テオドラキスはセテに術法発生装置〈ミーミル〉を思い浮かべる術法鍛錬の基礎を伝授し〈水の一族〉との接触を急がせる。

第二十八話:発芽する猜疑

セレンゲティを後にした一行の船は大海原を進み、〈水の一族〉が住むという辺境の小国ラナオルドへ向かう。味方を犠牲にしたことで重苦しい空気が船内を漂うが、アスターシャはまた別の重苦しさに捕らわれていた。サーシェスが別人のように感じるのだった。

第二十九話:伝染

サーシェスには怪我はなく、当のアスターシャは事件のことを覚えていない。ベゼルにはアスターシャがサーシェスに抱く気持ちがよく分かっていた。嫉妬だ。そして訪れたベゼルを待ち構えていたサーシェスの瞳からにじみ出るような悪意を感じたベゼルは……

第三十話:忘れ得ぬ傷

海に落ちたサーシェスを追いかけて飛び込んだセテ。慣れない海と冷たい水温に身体がかじかみ、思うように動けなかったところを引き揚げられたが、海賊とおぼしき一行にレイザークやヨナスが拘束されている。そこへ「味方だ」と叫んだジョーイがようやく駆け込んでくるが……。

第三十一話:大混戦

巨大な水柱は大きなアーチ状に変形し、光り輝く水鏡となった。水鏡の中からローブを羽織り、フードを目深にかぶった老婆の姿が現れたが、ヴィンスによれば彼女こそが〈水の一族〉の末裔たる者たちの長老だという。レイザークは身分を明かし、〈水の一族〉との同盟について切り出す。

第三十二話:相互協力

思いもよらぬ助っ人の登場により間一髪のところだった。セテは、男たちに担がれ悲鳴をあげるアスターシャを追って走る。行かせまいと敵が押し寄せてきたが、飛影を振るい応戦するも、先は行き止まりになっており、そこで仕留めれば問題ないはずだった。しかし──。

第三十三話:奔流

セテの発案で、一行は議会の助言者である末裔の者の長老に会うため、術法による通信手段を利用して長老のいる神殿まで乗り込んだ。しかし、頑なに協力を拒否する長老。セテの挑発的な言葉で長老を動かすことができたが、セテはその術法に巻き込まれてしまう。

あとがき

オリジナルSFファンタジー小説『神々の黄昏』の「第三章:死せる夢見の大地」あとがきです。

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