大長編SFファンタジー『神々の黄昏』を連載しているオリジナル小説サイトです
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意図的でないにしろ、大僧正との一件でロクラン城の牢獄に幽閉されることになってしまったサーシェス。暗闇の中で葬送の鐘の音に心を痛め、自らに課せられた運命の重さにひとり苦しむ。
一方、ピアージュとともにアジェンタスをあとにしたセテは、まず彼女のよりどころでもあったアジェンタス辺境の孤児院へと向かう。子どもたちや孤児院院長の喜ぶ姿を見ながら、セテはピアージュがもともと心の優しい少女であることを知り、しだいに心惹かれるようになっていく。
火焔帝率いる新生アートハルク帝国に見事制圧されたロクラン王国。国王アンドレ・ルパートをはじめ、顧問会や重鎮たちまでもが自室に軟禁状態となり、手も足も出ない。ガートルードに代わりロクランでの采配を振るうのは、幼い少女の姿をした巫女であった。
大僧正リムトダールの葬儀が、予定どおり行われることになったが、牢獄に囚われたままのサーシェスは出席を許されることはなかった。彼女は塔の牢獄の暗闇の中、見慣れた悪夢にまどろみながら、自らの犯した罪に苛まれる。そこへ巫女ネフレテリがやってきた。
騎士団の牢を抜け出してきたピアージュとともに、セテは馬車の中。そろそろ最初の集落に到着するころだった。妹を捜しているという彼女は、国境を越えるまでの間、協力するからいっしょにいさせてくれという。共犯者となったセテはまんざらでもなかった。
孤児院を後にしたセテとピアージュ。レイザークを探すためにもう一度ロクランへ戻ろうと思うセテに、ピアージュはもっといい情報が手に入る場所があるから着いてこいと言う。ただし、そこへ行っても自分の素性は隠し通せとぶっそうな約束をさせられたのだ。
退任が決まったガラハドは、自室を整理しながらこれからの人生について思いを巡らせていた。セテに託された「神の黙示録」ほか、旧世界の遺産を研究したい。それが彼の望みでもあった。ところがそこへ、アートハルクの大使と名乗る人物がやってきた。
結局セテは暁の戦士亭の店内をくるくる回りながら、ナルダという情報屋の帰りを待つことに。慣れない業務でも自分がこうした仕事に向いているのではないかと思い始めていた。このままピアージュといっしょにいられればいいのに。そんなことさえ考えていた。
父王との面会を許されたアスターシャは、父の悲願を達成すべく、サーシェスに近づく算段を始める。問題は、彼女の首にはまった術法封じの首輪。それに関してあの巫女なら知っているはずと、無謀にも巫女ネフレテリの部屋に忍び込むアスターシャだったが……。
アジェンタスの地下にある旧世界から続く巨大な迷宮を、アートハルク帝国の精鋭部隊、真紅の竜騎兵（クリムゾン・ドラグーン）が行軍していた。目的はアジェンタスが保有している要石。フレイムタイラントを封じ、霊子力炉の源でもある遺産の解放だった。
アジェンタス総督府がアートハルク帝国に包囲されたという信じ難い知らせを聞き、セテとピアージュは装備を調えてアジェンタスに戻る決意をする。故郷の母、そしてガラハド、スナイプスなど騎士団の面々の無事を祈りながら、セテは馬を全速で駆った。
すでに制圧された直後の総督府を後に、セテは復讐を誓う。だがその前に、隣町にいる母の安否が知りたい。荒れ狂う炎と地響きの中、セテは再び自分の中で殺人への衝動が大きく膨れあがっていくのを感じていた。封印した飛影を握り、公邸を出ると……。
アジェンタシミルが焼け落ちて数時間後、中央特務執行庁長官ラファエラ・フォリスター・イ・ワルトハイム将軍が到着した。彼女はガラハドと親しかったこともあり、現場の有様に心を痛めていた。そして彼に託したはずの「神の黙示録」が奪われたことを知る。
その日の朝を、サーシェスは自分の犯した罪に打ち震えながらほとんど眠れないまま過ごした。彼女は今日、光都オレリア・ルアーノへ送られることになっていた。記憶を取り戻せるかも知れないというわずかな希望と、知らぬ地へ送られる不安を抱えながら。
ロクランの馬車を狙う盗賊団との戦いに巻き込まれたサーシェス。戦闘の中、サーシェスは自分の力で戦うことを決意する。剣を手にした瞬間、彼女の中で高揚感が走る。実戦は経験ないはずなのに、まるで昔からこうした戦闘に慣れていたかのようだった。
街中で拾った折れた剣。それがかつての同僚の持っていた剣によく似ていると思ったレイザークは、鍛冶屋に頼んで復元をしてもらったのだが。目の前の青年は、それが父の形見だという。困惑するレイザーク。まさかこの青年が、あのときのあの子どもだったとは。
精神的なショックで、セテは剣を振るうことができなくなっていた。自分が本当に役立たずで誰も救うことができなかったと、セテは自分を責め続ける。そんなセテをレイザークは自分の手元に置くことを決意。当然セテは憤って激しく反発するのだったが……。
目を覚ましたサーシェスの目の前に広がっていたのは、赤茶けた大地ばかりが広がる地獄の鍋。だが、先ほどの盗賊団との戦闘に入ってからの記憶が定かでないサーシェスは、自分がなぜここにいるのか、どうして肩に傷を受けているのか理解できなかった。
お前の闇を切り裂き、暗闇の雲、追い払うべし。夢に出てきた聖騎士と騎士大学の青年にそう言われ、フライスは自分が深い闇に囚われ始めていることを認識する。手放した光を取り戻すためにサーシェスの元に戻るべくなのだが、彼にはまだなすべきことがあった。
傷が癒えるまでは洞窟の集落の人々に世話になることとなったサーシェス。だが、彼らの敵だというハルピュイアと呼ばれる一族に、サーシェスは懐かしさを覚える。まだなにか自分の知らないことがあるはずだ。彼らのすべてを知りたいとサーシェスは思う。
今度は風の一族に囚われたサーシェスは、彼らの長老に会うようにいわれ、赴く。そこで出会った長老に以前に会ったことがないか尋ねられるのだが、サーシェスにはもちろん心当たりはない。長老の口からは、中央では決して語られることのない過去が語られる。
夜を知らぬ都と呼ばれる〈光都〉オレリア・ルアーノには、未来を知るという預言者ヴィヴァーチェが、占いや予知で人々に光を与えていた。だが、いま彼女にアートハルク帝国の巫女ネフレテリの執拗な攻撃が迫る。はたしてネフレテリの目的はなんなのか。
レイザークに連れられてやってきた家の中から飛び出してきた銀髪の少年。レイザークの息子？ そんなことを考えていると、少年は声変わりのない声でセテに言った。「オレは女だ！」少女の名はベゼルといい、わけあってレイザークに厄介になっているという。
集落の人間たちとの取引の朝、早朝から中空を舞うナギサを見かける。本当に、背中に翼を持った彼らのなんと美しいことかと心を奪われていたのだが、長老の話を聞いたあとでは、ナギサの人間への執拗な憎悪には他の原因があるのではないかと思い始めていた。
姿を消したナギサは、風の一族の聖地とされている〈連絡艇〉の残骸にいた。ここにははるか昔、彼らが神々から賜ったとされる風の封印が安置されているのだという。幼い頃偶然にここに隠されていた書物でその存在を知ったナギサは、封印解呪の作業に入る。
いつもの悪夢にうなされ、恐怖を振り払うように叫んだセテの手の平が激しく痛み、なにかを告げる。サーシェスの身に危険が迫っているかもしれない。そう思ったセテは夜だというのに家を出ようとしたのだが、レイザークに引き留められ、剣を抜けと言われる。
再び部屋にやってきたベゼルと話をするうちに、セテはなぜ自分が剣士になりたかったのか、忘れていた大切な思いを取り戻した。もう一度最初からやり直そう。俺にはやり残したことが山ほどあるのだから。そうしてセテは料理大臣として料理を作ってやることに。
風の化身である鳥の姿をした化け物に、ドラゴンフライごとたたき落とされたサーシェスとマハ。落下していくそのわずかな時間、サーシェスの頭に大量の記憶が逆流していく。そして力強い声にサーシェスは我に返る。手をさしのべる黄金の巻き毛の騎士こそ──！
強大な力を振るう少女に助けられ、ようやく〈風の核〉を封印したことですべては終わった。集落の人々と〈風の一族〉は共存することで合意をしたが、まだこの件が残した遺恨は大きい。のみならず、解かれた風の封印の影響はアジェンタス郊外にまで及んでいた。
グレイブ・バリーに住む女賢者ヴィヴァーチェ。光都に住むことを拒否していた彼女が、突然光都に移り住み、中央評議会に協力的な態度を取るようになった。帰還したラファエラが報告中の議事堂に入ってきた彼女の口からは、信じられないような言葉が語られる。
ロクランの包囲網を見事突破したアスターシャ王女が目覚めたあと、彼女はレイザークとセテにロクランの現状といきさつを話して聞かせた。アスターシャは自分ひとりが逃げおおせたことを後悔しているようだったが、そんな折り、彼女の大切な親友の話に及ぶ。
ロクラン王国占領とアジェンタス陥落が一面を飾ったたあと、待機を続けるアートハルク帝国。その合間に火炎帝は入手した『神の黙示録』の解読に全力を尽くす。その幻の文書に自分たちの考える真実が隠されているのかどうか、ガートルードは思いをはせる。
アートハルク帝国軍と中央諸世界連合の動きを見、勝機を見つけるために、フライスは貧しい集落に身を置き、そこで病人やけが人の面倒を見るていた。愚かな自分の振る舞いを恥じ、心の空隙に身を焦がす毎日ではあった。そんな折り、術法戦の気配が感じられた。
いわれなき罪を問われたラファエラは軟禁状態であったが、尋ねてきた評議会議長ベナワンから、中央が武力対決の決議をしたことを聞かされ、彼女自身の戦いを始める決意をする。そしてセテとレイザークも、新たな使命を果たすべく光都に向かう決意をする。
オリジナルSFファンタジー小説『神々の黄昏』の「第二章：黄昏の戦士」あとがきです。
